水泳の筋トレは、泳ぐ練習を置き換えるものではなく、姿勢保持・ストローク・キックを支える補助トレーニングです。初心者はスクワット、ロウ、デッドバグなど全身7種目を週2回、各1〜3セットから始め、泳いだ翌日の疲労や肩・腰の痛みを見ながら調整してください。
水泳に必要なのは腹筋を固め続けることではありません。腕・脚を動かしても姿勢を保ち、必要な範囲で回旋し、壁を蹴る力を水へ伝えることです。陸上筋トレ、水中ドリル、回復を一つの週計画として組みます。

水泳の筋トレとは|水中技術を支える陸上補強
水泳の筋トレは、プール外で筋力、姿勢制御、関節を動かす能力を高め、水中練習を支える取り組みです。体幹だけを鍛えるのではなく、脚で床や壁を押す力、背中で引く力、肩まわりの安定、呼吸しながら姿勢を保つ力を全身で整えます。
体幹は「腹筋」だけではない
水泳でいう体幹には、腹部、背部、胸郭、骨盤まわりが含まれます。クロールや背泳ぎでは回旋し、平泳ぎやバタフライでは屈伸と伸びを繰り返します。動かないよう固めるだけでなく、必要な方向へ動きながら不要なぶれを抑える能力が重要です。
筋力と泳ぐ技術は別に評価する
スクワットの重量が増えても、それだけでストロークやキックが自動的に改善するわけではありません。陸上で筋力を作り、水中で姿勢、ストローク数、呼吸、ペースを確認します。水泳と筋力トレーニング全体の関係は水泳と筋トレを両立する基本も参照してください。
初心者と競技者では目的が異なる
初心者は姿勢を崩さず反復できる基礎筋力が中心です。競技者はスタート、ターン、短距離の推進力、シーズン中の疲労管理など、種目と距離に応じて目的を絞ります。同じ7種目でも負荷、速度、セット数は変わります。
水泳で筋トレを行う5つの理由
1.ストリームラインを保つ土台を作る
壁を蹴った後や泳いでいる途中で腰が反り、脚が沈むと、水の抵抗が増える可能性があります。デッドバグやヒップヒンジで、肋骨と骨盤の位置を保ちながら手足を動かす練習をします。
2.プルとキックの力を体幹でつなぐ
腕で水をかく動作と脚のキックは、肩甲帯、体幹、骨盤を通じて連動します。片側だけで引くロウや、対角の手足を動かすバードドッグは、左右の動きをつなぐ基礎になります。
3.スタートとターンで壁を押す
スタート台や壁を押す場面では、脚の筋力と体幹の固定が必要です。スクワットやヒップヒンジで床を押す練習を行い、水中では壁を蹴った後に細い姿勢へ戻れるか確認します。
4.練習後半の姿勢維持を狙う
疲労すると呼吸側へ流れる、腰が落ちる、ストロークが短くなることがあります。筋持久力だけが原因とは限りませんが、陸上でフォームを崩さず反復する能力は改善候補の一つです。競技力全体の組み立て方はスポーツパフォーマンス向上トレーニングの基本も参考にしてください。
5.肩まわりの負荷を分散する
水泳では肩の内旋方向の動作を繰り返します。背中、肩甲帯、外旋筋群などを陸上で鍛える考え方がありますが、特定の種目で肩のけがを防げると保証はできません。痛みがある場合は予防運動で様子を見ず、評価を受けてください。
研究から分かることと限界
若年男性スイマー18人を対象とした6週間の無作為化比較試験では、通常の水泳練習へ体幹トレーニングを追加した群で50m自由形などの改善が報告されています。一方、男女32人を対象に週2回・8週間の体幹トレーニングを追加した試験では、主要指標の明確な群間差は示されませんでした。
改善報告と差が出なかった報告の両方を見る
研究結果が異なる背景には、年齢、競技レベル、種目、期間、体幹メニュー、通常練習量などの違いがあります。「体幹を鍛えれば必ず速くなる」と断定せず、本人の課題へ合うかを記録で確認します。
肩の補強研究も治療効果を保証しない
男性スイマー22人を対象に、ゴムバンドで肩外旋筋群を鍛えた8週間の無作為化試験では、外旋筋力や可動域に小さな変化が報告されましたが、統計的に明確ではない項目もありました。痛みの治療法や、すべての肩障害を防ぐ方法を示す研究ではありません。
研究対象の多くは若年または競技スイマーで、人数も限られます。成人初心者、健康目的、長距離、平泳ぎなどへ同じ結果を一般化しません。6〜8週間試し、筋力・フォーム・水中指標・痛みを別々に記録します。
| 項目 | 確認例 | 記事での扱い |
|---|---|---|
| 対象者 | 年齢、性別、泳歴、競技レベル | 自分と異なる場合は一般化しない |
| 水中練習 | 対照群と同じ練習か | 筋トレ単独の影響かを分ける |
| 評価 | 50mタイム、ストローク、筋活動 | 目的と同じ指標か確認する |
| 期間 | 6週間、8週間など | 短期結果を長期へ断定しない |
水泳の筋トレメニューを設計する4原則
水中練習の課題から種目を選ぶ
腰が反るなら姿勢制御、壁を強く蹴りたいなら脚力、プル後半で崩れるなら背中と体幹の連動というように、課題から逆算します。人気種目をすべて並べる必要はありません。
週2回・各1〜3セットから始める
初心者は非連続日の週2回が記録しやすいでしょう。各種目はフォームを保てる6〜12回、静止種目は呼吸を続けられる15〜30秒から始めます。水中練習量が多い週は陸上のセット数を減らします。
余力を残して終える
毎回限界まで行うと、泳ぎのフォーム練習へ疲労を残す場合があります。終了時にあと2〜4回できそうな負荷を目安にし、翌日の肩、腰、睡眠、泳ぎの重さを記録してください。
重量・回数・難度を同時に増やさない
進歩させる際は、回数、セット、重量、可動域、姿勢の難度から一つだけ変えます。変更を分けると、疲労や痛みが増えた原因を見つけやすくなります。
| 項目 | 開始目安 | 調整基準 |
|---|---|---|
| 頻度 | 週2回・非連続日 | 水中練習が重い週は週1回も可 |
| 回数 | 6〜12回 | 同じフォームで終えられる範囲 |
| セット | 1〜2セット | 慣れたら主要種目だけ3セット |
| 強度 | 余力2〜4回 | 重要練習前はさらに軽くする |
| 休憩 | 60〜120秒 | 呼吸と姿勢が戻るまで延長可 |
水泳におすすめの筋トレ7選
次の7種目は、水泳のタイム短縮や障害予防を保証するものではありません。痛みなくフォームを保てる種目を3〜5個選び、水中練習との合計負荷を見ながら進めます。
1.ゴブレットスクワット
目的:スタート・ターンを支える脚力。
方法:ダンベルを胸の前で持ち、足裏全体を床へつけたまま股関節と膝を曲げます。床を押して立ち、膝とつま先を概ね同じ方向へ向けます。
目安:6〜10回×1〜3セット。
2.ルーマニアンデッドリフト
目的:臀部・もも裏とストリームラインの土台。
方法:膝を軽く曲げ、背中を大きく丸めずに臀部を後ろへ引きます。もも裏に張りを感じる範囲から、床を押して戻ります。
目安:6〜10回×1〜3セット。
3.ハーフニーリング・ワンハンドロウ
目的:プル動作を支える背中と体幹の連動。
方法:片膝立ちでケーブルまたはチューブを片手で引きます。肋骨と骨盤を重ね、体を大きくねじらず肘を後方へ運びます。
目安:左右8〜12回×1〜3セット。
4.インクラインプッシュアップ
目的:胸、上腕、肩甲帯の押す力。
方法:ベンチや壁へ手を置き、頭から踵までを保って胸を近づけます。肩をすくめず、痛みのない可動域で押し戻します。
目安:6〜12回×1〜3セット。
5.デッドバグ
目的:手足を動かす間の腰部・骨盤安定。
方法:仰向けで股関節と膝を曲げ、息を吐きながら反対の腕と脚をゆっくり伸ばします。腰が大きく浮く手前で戻します。
目安:左右6〜10回×1〜3セット。
6.サイドプランク
目的:横方向と回旋の制御。
方法:肘を肩の下へ置き、頭から足までを一直線に保ちます。難しければ膝を曲げて接地します。
目安:左右15〜30秒×1〜3セット。
7.パロフプレス
目的:外から回される力へ抵抗する能力。
方法:体の横から張ったチューブを胸の前で持ち、両手を正面へ伸ばします。骨盤を正面へ保ち、ゆっくり戻します。
目安:左右8〜12回×1〜3セット。
泳法別に優先する筋力を変える
泳法名だけで特定種目の効果は決まりません。次の表は、陸上で意識する機能と水中で確認する点を結びつける例です。
| 泳法 | 優先機能 | 種目例 | 水中で確認 |
|---|---|---|---|
| クロール | 回旋制御、片腕のプル | ワンハンドロウ、サイドプランク | 呼吸時に脚が開きすぎないか |
| 背泳ぎ | 骨盤位置、左右交互の連動 | デッドバグ、パロフプレス | 腰が反りすぎずキックが続くか |
| 平泳ぎ | 脚で押す力、伸びへの復帰 | スクワット、デッドバグ | キック後に細い姿勢へ戻れるか |
| バタフライ | 股関節、体幹と上肢の連動 | RDL、ロウ、デッドバグ | 腰だけを反らせてうねっていないか |
肩や胸郭の動かしやすさも泳ぎへ影響します。筋トレ前後に無理なストレッチを増やすのではなく、目的に合う可動域を確認してください。詳しくはスポーツに必要な柔軟性とストレッチで解説しています。
初心者向け週2回・30分メニュー
A日:脚力と姿勢を作る
- ゴブレットスクワット:8回×2セット
- ハーフニーリング・ロウ:左右10回×2セット
- デッドバグ:左右8回×2セット
- サイドプランク:左右20秒×2セット
B日:股関節と回旋制御を作る
- ルーマニアンデッドリフト:8回×2セット
- インクラインプッシュアップ:8〜12回×2セット
- パロフプレス:左右10回×2セット
- デッドバグまたは軽いサイドプランク:1〜2セット
最初の2週間は1セットでもよい
筋肉痛が強い、泳ぎが重くなる、睡眠に影響する場合は、各種目1セットへ減らします。3〜4週目に2セット、5〜6週目に主要種目の重量を少し増やすなど、一段階ずつ進めます。
6週間は同じ指標を記録する
毎週種目を変えると、自分に合うか判断しにくくなります。筋トレの重量・回数、水中のストローク数、タイム、主観的なきつさ、肩や腰の状態を分けて残します。
水中練習と筋トレをどう配置するか
重要なタイム測定の直前を避ける
高強度の筋トレで疲労した直後に、重要なフォーム練習やタイム測定を置く必要はありません。同日に行うなら水中の重要練習を先にし、陸上補強は後に短く行う方法があります。
週の例
月曜に水中+A日、火曜は軽い水中、水曜は休養、木曜に水中+B日、金曜は技術練習、土曜は水中、日曜は休養という形が一例です。練習頻度、学校・仕事、睡眠に合わせて変えてください。
回復が遅れている日は減らす
肩や腰の違和感、強い筋肉痛、睡眠不足、安静時からのだるさがある場合は重量とセットを減らすか休みます。回復日の考え方はスポーツ後の回復とセルフケアも確認してください。
陸上筋トレで疲労し、水中でフォームを反復できなくなるなら本末転倒です。大会前や水中練習量が多い週は、筋トレの量を減らしても構いません。
水泳の筋トレ効果を測る方法
筋力の進歩を記録する
同じフォームで扱える重量、回数、静止時間を残します。重量だけでなく、腰の反りや骨盤の揺れが減ったか、左右差が小さくなったかも記録対象です。
水中の指標を分けて測る
50mのタイムだけでなく、ストローク数、15mまでの時間、ターン後の浮き上がり、同じペースでの主観的なきつさなどを測ります。一度にすべて変えず、同じ条件で比較します。
痛みを成果指標にしない
「痛くなるまで追い込めた」を成功と考えないでください。肩や腰に痛みが出る場合は、種目、可動域、負荷、泳ぎの合計量を見直します。
水泳筋トレでよくある失敗
腹筋種目だけに偏る
上体起こしや長時間プランクだけでは、脚で押す力や背中で引く力を十分に練習できません。スクワット、ヒップヒンジ、ロウを含めて全身を扱います。
水をかく動作を重いチューブで再現する
陸上のチューブ動作は水中と抵抗方向や速度が異なります。重くしてフォームを崩すより、筋力種目と水中ドリルを役割分担します。
毎回限界まで追い込む
筋肉痛の強さは泳力向上を保証しません。週全体の水中練習へ影響しない余力を残し、継続できる量にします。
食事を後回しにする
水中練習と筋トレを行う日は、食事と水分を確保します。個別の必要量は体格、練習量、目的で異なります。一般的な考え方は運動する人のたんぱく質摂取量も参考にしてください。
肩・腰に違和感があるときの注意点
本記事は一般的な運動情報であり、診断や治療の代わりではありません。次の状態では運動を中止し、症状に応じて医療機関や資格を持つ専門家へ相談してください。
- 肩や腰の鋭い痛み、夜間痛、しびれがある
- 腕に力が入りにくい、関節が不安定に感じる
- 胸痛、息苦しさ、失神、強い動悸がある
- 運動後の症状が数日たっても改善しない
- 痛みによって泳ぎや日常動作が変わっている
成長期は指導者の管理下で行う
子どもや学生は年齢だけで可否を決めず、成長段階、泳歴、練習量、フォーム理解を確認します。重量を競わせず、動作の習得を優先してください。
既往歴や治療中の状態を共有する
心血管疾患、呼吸器疾患、肩・腰の治療歴などがある場合は、自己判断で高負荷を始めず、医療者と指導者へ運動条件を確認します。
まとめ|水泳の筋トレは全身7種目を週2回から
- 水泳の筋トレは水中技術を置き換えず、姿勢・ストローク・キックを支える
- 体幹だけでなく脚、股関節、背中、押す力を全身で鍛える
- 初心者は7種目から3〜5種目を選び、週2回・1〜2セットから始める
- 重要な水中練習へ疲労を残さないよう週の配置を調整する
- 研究は小規模で対象が限られ、タイム短縮や障害予防を保証しない
- 肩や腰の痛み、しびれ、力が入らない症状があれば中止する
泳ぎの課題に合わせた陸上補強はcortisのパーソナルトレーニング内容・料金で確認できます。フォームと週間計画を相談したい方はcortis体験トレーニング・お問い合わせをご利用ください。
水泳の筋トレに関するFAQ
Q1.水泳の筋トレは週何回がよいですか?
初心者は非連続日の週2回から始めると調整しやすいでしょう。水中練習量が多い週や大会前は、週1回またはセット数を減らします。
Q2.プランクだけでも十分ですか?
プランクは姿勢保持の基礎になりますが、脚力、股関節、背中、片側動作も必要です。スクワット、ロウ、デッドバグなどを組み合わせます。
Q3.筋トレをすると水泳のタイムは必ず縮みますか?
保証できません。改善を報告した研究と明確な群間差が出なかった研究があり、技術、練習量、回復、競技レベルなども関係します。
Q4.筋トレで体が重くなりませんか?
適切な量の補強で直ちに大幅な体重増加が起こるとは限りません。競技目標に合わせ、重量、セット、食事、水中練習のバランスを確認します。
Q5.肩に違和感があるときもできますか?
痛みやしびれがある状態で自己判断して続けないでください。運動を中止し、症状が続く場合は医療機関や資格を持つ専門家へ相談してください。
一次情報・参考資料
- Efficacy of Core Training in Swimming Performance and Neuromuscular Parameters of Young Swimmers(無作為化比較試験、閲覧日:2026年8月30日)
- The Effect of the 8-Week Core Muscle Training in Swimming Time, Swimming Force and Core Muscle Activity Among Swimmers(無作為化比較試験、閲覧日:2026年8月30日)
- Dry-land shoulder strengthening with elastic bands in swimmers(無作為化比較試験、閲覧日:2026年8月30日)
- World Aquatics:FINA Clinics Guidelines(競技団体資料、閲覧日:2026年8月30日)
執筆者情報
執筆・監修:日原裕太(NSCA-CPT/パーソナルジムcortis代表)
トレーニング指導歴10年以上。横浜・保土ケ谷で、競技補強、筋力トレーニング、生活習慣の支援を行っています。経歴・資格はトレーナー日原裕太のプロフィール、所在地はcortisへのアクセス案内をご覧ください。
公開日:2026年5月25日
更新日:2026年8月30日
